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アンダーキャットの考察日記



HARUKI MURAKAMI

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私の夫は自転車の次に作家"村上春樹"が大好きだ。
英訳されたほとんどすべての彼の本が、本棚にお行儀よく神経質そうに並んでいる。その中には村上さん直筆サイン入りのカバーが存在するらしく、彼にとっては宝物の一品である。

私がうっかりその本の隣に"猫村さん"を並べてしまおうものなら、すぐさま飛んできて強制的に下段(私の本棚エリア)に移動され、ギッとにらまれる。私も村上春樹の作品は好きだが、ファンのレベルでは彼には到底かなわない。


そんな夫に朗報が。
ニューヨークの有名なインテリ雑誌"The New Yorker"が、村上春樹を招きチケット制で公開インタビューイベントを行うという。夫は不思議なくらいそういう情報には敏感で、あっという間にチケットを手に入れていた。(後に聞いたが、そのチケットは発売開始から11分でSOLD OUTだったそうな…)村上ファンの私の親友Aちゃんは、チケットが取れなかったためeBayで落札したそうだ。


それが本日10/5。
夫は家を出る時、最近翻訳されたばかりの"What I Talk About When I Talk About Running(走ることについて語るときに僕の語ること)"を感慨深そうに眺め、ジャケットのポケットに忍ばせた。

会場はインテリな雰囲気の白人やアジア系が多数を占めていた。外にはいまだにどうにかして中に入ろうとしているファンでごった返していた。さすが世界のHARUKI MURAKAMI。

早い者勝ちの席順だったので、早めに到着した私たちの席は前から5列目でまぁまぁの席を確保できた。夫はもっと早く来ればと悔しがっている。Aちゃんはどこかな?と周りを見渡すと堂々の最前列正面席である。悔しいはずの夫だが、ちゃんと笑顔でAちゃんに手を振っている(笑)。

インタビュー開始まで少し時間があったので手帳に日記を書いていると、後ろから「日本人ですか?」と声をかけられた。振り返ると白人の兄ちゃんが、「僕は今日カナダからきました。昔大阪に住んでいたことがあります。なたの出身はどこですか?僕も村上春樹の大ファンですが、あなたの一番好きな彼の作品は何ですか?ぼくはノルウェイの森に感銘を受けました。あなたはニューヨークに住んでいるのですか?」とドドドッと訛りのない流暢な日本語で聞いてきた。一瞬たじろいだが、すぐさま「はい、日本人です。出身は福島です。一番好きな作品は"ねじまき鳥クロニクル"です。今はニューヨークに住んでいます。」と息継ぎする間もなく回答した瞬間、会場の照明が落ちて本日のインタビュアーであるTHE NEW YORKER の編集者Deborah Treismanがステージにあがった。続いて村上春樹が登場した。



インタビューが始まると通訳者もなくインタビュアーと英語でのやりとりが続く。村上ファンの観客は彼のジョークに沸いたり、真剣にうなずいたりしてとても熱心に聞き入っている。隣を見ると夫も例外なく目をキラキラさせて彼に熱い視線を送っていた。

今まで私にとって作品自身が村上春樹であったが、生でみる村上さん本人は気さくでシャイな面白いおじさんであった。質問の受け答えも気負っておらず、親近感が持てる。とはいっても、世界的に有名な小説家村上春樹。時々ドキッとするような発言をする。こんな風に才能に溢れる人を目の前にすると、稲妻に打たれたような衝撃が走る。29歳で突然小説を書き出したという彼。「俺にとって物語を書く事は簡単だ」と言い切る。小説家としてずっと書き続けることは難しい。それを自然にやってのける様はやはり凡人ではない。

インタビューが終了。残念ながらサインをもらう機会はなかったものの、夫は満足気にステージを後にする村上春樹に大きな拍手を送った。

ポケットに忍ばせていった本は、きちんと本棚の元の場所に戻された。サインはなくとも、これからは"HARUKI MURAKAMIのインタビューに連れて行った本"として自慢されるに違いない。
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by makaleo | 2008-10-06 16:53 | ニューヨーク
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ニューヨークに暮らすGデザイナー&美大生。日々の悶々とした考察について綴っています。※ブログの写真や記事の無断転載お断り

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